私たちが住む現代とは、どのような特徴をもった時代でしょうか。
他の時代と比較すれば、さまざまな特徴を挙げることができるでしょう。しかし、もっとも重要な特徴のひとつは、急激に知が拡大している時代であるという事です。学問の発展が知を共有する技術を産み出し、その技術がまた学問の発展を促す。そのような正の循環が回り始めたことで、過去に人類が経験した事がない勢いで、知は膨張を続けています。言うなれば、「知のインフレーション」が起きているのです。
この急速な知の拡大は、私たちの住む社会をより豊かなものへと導いてくれましたが、一方で、学問と社会の距離を広げる結果にもなりました。最先端の研究とはどのようなものであるのかを知ることは、簡単ではありません。学術を支える思想や考え方はもちろん、そこで産み出されている成果は、もっと広く社会に還元される余地があるでしょう。逆に、専門家が自分たちのコミュニティを越えて、広く社会の声に耳を傾けることも大事です。そのために、社会と学術の関係をデザインしていくことが求められているのです。
私たちは、このような考えに基づき、学術と社会の間で成立するすべての事柄を、学術コミュニケーションと呼ぶことにしました。従来より行われている啓蒙型の諸活動はもちろん、近年注目を浴びている対話型の諸活動もすべて視野の中に入れながら、より豊かで充実した社会のあり方を考え、実践を通じて実現して行きたいと思います。